体外受精・顕微授精
wakimoto clinic

体外受精

日本では17人に1人が体外受精・顕微授精で出生し、その内の約8割は凍結融解胚移植から出生しています。
当院院長は平成元年に大阪の民間病院初となる体外受精を成功させ、当院での体外受精は平成4年から実施しております。

体外受精・顕微授精は有効な治療ではありますが、100%成功する医療ではありませんので、複数回実施する可能性を考慮する必要があります。
複数回実施するには経済的な負担が問題となってきますが、当院ではエビデンスに基づいたスタンダードな高度生殖補助医療を低価格で提供しております。
お二人の新たなチャレンジをお手伝いさせていただきますので、ご相談下さい。

体外受精(IVF:In Vitro Fertilization)

体外受精(IVF)は通常、卵管から子宮にかけて起こる受精から胚発育の過程を体外で行う治療法です。排卵直前の卵子を卵巣から採取し、精子とともに培養することで受精を成立させる方法であり、タイミング法やAIHよりも妊娠率が高い治療です。

体外受精

体外受精

IVFの適応

1.
卵管性不妊症(両側卵管閉塞など)
2.
男性不妊症(乏精子症、精子無力症など)
3.
免疫性不妊症(抗精子抗体陽性)
4.
原因不明不妊症

体外受精の流れ

1.調節卵巣刺激

体外受精を実施する周期においては、複数の卵子を獲得するために排卵誘発(FSH、hMG製剤などのホルモン注射)を行い、自然排卵の抑制を目的にGnRHアゴニスト(点鼻薬)またはGnRHアンタゴニスト製剤(注射)を使用して調節卵巣刺激を行います。

反応が悪い場合はクロミッド内服による低刺激や自然周期で採卵を実施します。超音波検査やホルモン検査を行い、十分な卵胞発育が得られたら、hCGを注射して卵子の成熟を促します。

2.採卵

採卵は夜間のhCG注射から35~36時間後の朝に開始します。当院での麻酔は鎮痛剤と鎮静剤を用いた上で局所麻酔を併用していますので、痛みに関してはほとんど問題になりません。
経膣超音波下で卵胞を確認しながら細い針で穿刺し、卵子を卵胞液とともに吸引します。
採取できた卵子の数はその場でお伝えします。卵子を完全に成熟させるために体外受精を実施するまで数時間の前培養を行います。

採卵後は2~3時間安静にしていただいた後、退院診察を行います。採卵当日は入浴は控えていただき、抗生剤の内服を開始していただきます。

3.採精・精液調整・媒精

ご主人様は奥様と一緒に来院していただき、当院のメンズルーム(採精室)にて採精していただきます。
お仕事の都合により来院が難しい場合には、採卵当日の朝にご自宅にてあらかじめお渡しした専用のカップに採精してお持ちいただいても結構です。
採取できた精液は培養液で洗浄・遠心後に、運動良好な成熟精子のみを回収します。
5万~10万匹の運動精子と卵子を同じディッシュの中で培養(媒精)して、受精を成立させます。

4.受精確認

媒精の17~20時間後に受精確認を行い、2個の前核が確認できた卵子は正常受精と判断し、胚移植または胚凍結まで培養を継続します。
3個以上の前核が確認できた卵子は異常受精と判断し、胚移植や胚凍結を行うことはできません。

受精確認

5.胚発育

媒精または顕微授精を実施した日をDay0として、Day1(受精確認)は前核期胚、Day2は4細胞期胚、Day3は8細胞期胚、Day4は桑実期胚、Day5は胚盤胞と分割していきます。

顕微授精(ICSI:IntraCytoplasmic Sperm Injection)

顕微授精(ICSI)は細い専用のピペットを用いて、卵子の中に1個の精子を人為的に注入して受精を成立させる方法です。
卵子はヒアルロニダーゼを用いて卵丘細胞を剥離し、成熟度を確認して実施します。

顕微授精には成熟卵子のみを使用するため、得られた全ての卵子を顕微授精に使用できるとは限りません。
精子はピペットで不動化処理を行い細胞膜を破綻させ、卵細胞質内への注入後に精子から卵子活性化因子を流出させることで卵子の減数分裂を再開させます。

顕微授精

ICSIの適応

1.
体外受精での受精障害
2.
高度な男性不妊症(体外受精に必要なだけの運動精子を回収できない場合)
3.
無精子症(精巣内精子や精巣上体精子を用いる場合)

卵子活性化法

顕微授精においても受精障害が発生した場合には、顕微授精が完了した卵子をカルシウムイオノフォアで処理することで卵子を活性化させ、受精を促します。
卵子活性化法により受精率の増加だけでなく、胚発育が改善する可能性もあります。

胚移植(ET:Embryo Transfer)

胚移植(ET)は体外受精や顕微授精によって得られた受精卵(胚)を子宮内に戻す操作です。
胚移植では多胎妊娠を防止する目的で1個移植となります。
35歳以上の場合や2回以上続けての反復着床不全の場合には2個移植を行うこともありますが、胚盤胞では原則1個移植です。

1.新鮮胚移植と凍結融解胚移植

採卵の2~5日後に胚移植行う新鮮胚移植と、凍結保存しておいた胚を融解して移植する凍結融解胚移植があります。
新鮮胚移植については、採卵決定時のホルモン値や、子宮内膜の厚さにより移植は実施せずに胚凍結を行い、次周期以降に子宮内膜環境を整えた上での凍結融解胚移植に変更する場合があります。
胚の凍結融解技術の向上により、全国的に見ても、体外受精・顕微授精の出生児の8割くらいは凍結融解胚移植によるものとなっています。どちらで移植するかはDrの診察によります。

2.初期胚移植と胚盤胞移植

培養2~3日目の4~8細胞期胚を移植する初期胚移植と培養5~6日目の胚盤胞を移植する胚盤胞移植があります。
胚盤胞まで培養することにより移植胚の選別をすることができるため、移植あたりの妊娠率は高くなりますが、胚盤胞まで到達しないというデメリットもあります。

どの段階まで培養するかは患者さん、Dr、培養士で相談して、決定しております。
当院では胚盤胞までの培養でも追加費用は発生しません。
また、自家発電装置を備えており、培養中に急な停電があっても一定時間は対応できる体制をとっております。

3.排卵周期胚移植とホルモン補充周期胚移植

ご自身の排卵を利用して胚移植をする方法と内服や貼付剤、腟剤などでホルモンを補充して胚移植する方法があります。
ホルモン補充周期は自分の排卵を利用しないため、妊娠9週頃までホルモン補充を継続する必要があります。
妊娠成績は自然排卵周期の凍結胚移植と同等で、薬剤の費用もかかりますので、当院では排卵周期での凍結胚移植を第1選択にしています。
しかし、排卵障害がある方、お仕事等で移植日を予め決めておきたい方はホルモン補充周期の適応となります。

胚凍結保存

多胎妊娠防止のため移植可能は胚の数は1個または2個までとなっており、余剰となった胚につきましては凍結保存を行います。
また、子宮内膜環境の不良や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症などの胚移植に適さない症例においても胚凍結保存を行います。

現在は胚凍結保存技術の向上により、融解後の胚生存率は非常に良好です。
しかしながら、一部の胚につきましては凍結融解の影響を強く受けてしまい胚移植に使用できない場合があります。

反復着床不全 

良好胚を複数回移植しても妊娠に至らない場合は着床不全と考えられ、次のような対応が可能です。

1.AHA(Assisted Hatching:孵化補助法)

胚盤胞まで到達した胚は子宮内膜に着床する前に、胚を保護している透明帯から胚自体が孵化します(ハッチング)。
しかし、透明帯の肥厚や硬化がハッチングを阻害することで胚が着床できないのではないかという考えから、透明帯の一部を切開してハッチングを補助する孵化補助法(アシストテッド・ハッチング)があります。
移植を繰り返しても妊娠しない方や凍結融解胚移植を行う方が対象となります。

反復着床不全

2.ヒアルロン酸含有胚移植専用培養液

Embryo GlueやUTMはヒアルロン酸を高濃度に含む胚移植専用の培養液です。ヒアルロン酸は粘性が高いという性質があり、この性質により胚が子宮内膜への接着、つまり着床を促進すると考えられています。
当院では令和元年10月より胚移植全例にヒアルロン酸含有胚移植専用培養液を使用しています。

3.SEET法(Stimulation of Endometrium Embryo Transfer; 子宮内膜刺激胚移植)

SEET法とは胚盤胞培養時に胚盤胞を入れていた培養液を凍結保存しておき、その培養液を凍結融解胚移植の3日前に子宮に注入する方法です。
培養液中に存在する胚由来の因子が子宮内膜に作用し、妊娠率を向上させる可能性があります。移植を繰り返しても妊娠しない方が対象となります。
培養液を凍結保存しておく必要があるため、希望される方は採卵開始までに医師にお伝え下さい。

4.ERA ( Endometrial Receptivity Array; 子宮内膜受容能検査

ERAは複数回の胚移植を実施しても妊娠に至らない反復着床不全の方が対象となる検査です。
子宮内膜組織を採取し、着床に関連する遺伝子を調べ、着床のタイミングを診断します。
そして次周期以降にERAの診断結果に基づき、胚移植を実施します。
希望される方はあらかじめ医師にお伝え下さい。なお、ERAにつきましては当院にて不妊治療を受けられている方に限らせて頂きます。

妊娠率
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