不妊症の原因・検査・治療
wakimoto clinic

不妊治療をお考えの方へ

不妊症の原因としては、以下のような点が考えられます。原因が1つの場合もあれば、複数の場合もあります。
頻度が高いのは排卵障害、卵管障害、精子異常でこれらはまとめて不妊症の3大原因とされています。

1.排卵因子(排卵障害・黄体機能不全・ホルモン異常)

脳の中心部にある視床下部の働きで、黄体化ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌され、これが脳下垂体前葉を刺激し、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)を放出します。
 FSHとLHは卵巣に作用し、最終的に卵巣から卵胞ホルモン(エストロゲン:E2)と黄体ホルモン(プロゲステロン:P4)が分泌されます。
 したがって、視床下部-下垂体-卵巣系の機能バランスが保たれてはじめて規則正しいホルモン環境が整えられます。これらのどこかに障害があれば、排卵は妨げられます。

●検査法

基礎体温測定、各種血中ホルモン測定を行います。重要なホルモンは当日中に採血結果が出ます。

●治療法

内服薬(クロミフェン、シクロフェニル)や注射薬(FSH製剤、HMG製剤)などの排卵誘発剤を用います。
排卵誘発剤には、「排卵のない人に排卵を起こす」無排卵の治療という使い方と、卵胞ホルモンや黄体ホルモンを高める作用を期待して用いる使い方があります。
そのため、自然排卵のある人にも排卵誘発剤を使用します。

黄体機能不全の場合、上記の治療以外に黄体ホルモンを内服薬や注射薬で補う方法、黄体機能を刺激するhCGを注射する方法があります。
プロラクチンや甲状腺ホルモンに問題があれば、適切な治療により排卵障害が回復することがあります。
また、肥満や極端な減量も排卵障害の原因として知られており、適切な体重コントロールで排卵することもあります。

不妊症の原因

不妊症の原因

2.卵管因子(卵管通過障害)

不妊症の原因

両側の卵管が詰まっていると精子と卵子は出会うことができませんので、早い段階で検査が必要になります。
特にクラミジア感染の既往がある場合は卵管閉塞のリスクが高くなります。クラミジアは性行為により感染し、炎症の程度が強い場合には卵管閉鎖や癒着などを引き起こします。

●検査法

当院ではクラミジアの検査を実施してから、卵管通気通水検査、超音波下子宮卵管造影検査を実施します。

●治療法

軽度の卵管通過性障害であれば、通水により卵管の疎通性がよくなり、検査後に妊娠される方もたくさんいらっしゃいます。
通水検査で抵抗があれば、子宮卵管造影検査に進みます。造影検査で卵管の通過性に問題があれば、ご相談の上、治療方針を決定していきます。
治療には腹腔鏡手術、卵管鏡下卵管形成術、体外受精があります。

不妊症の原因

3.男性因子(精子異常)

不妊夫婦の原因を調べると、40%以上で精子に問題があると言われています。
精子の数が少ない(1500万/ml以下)場合を乏精子症、精子の運動性が悪い場合を精子無力症といいます。

●検査法

精液採取の容器をお渡しして、3-4日間の禁欲期間の後に、精液検査を行います。当日中に結果を聞いていただけます。
精子がいない場合や重度の乏精子症、精子無力症の場合は泌尿器科の男性不妊外来を紹介させていただきます。

●治療法

軽度の乏精子症や精子無力症の方に対しては、薬物療法や人工授精を行います。精索静脈瘤など手術により精子所見の改善が見込まれる場合は手術療法、特に原因がない場合は体外受精・顕微授精が適応となります。
大阪警察病院泌尿器科と連携し、顕微鏡下精巣内精子採取術(MD-TESE)による顕微授精も対応しております。

不妊症の原因

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4.頸管因子(頸管粘液分泌不全)

不妊症の原因

頸管粘液とは、排卵日の3~4日前から排卵日にかけて子宮頸管から分泌される粘稠度の低い透明なおりものです。
精子はその助けを借りて子宮頸管内を上昇し、子宮内腔に到達します。頸管粘液の分泌が少ない場合や精子との適合性が悪い場合は、精子が子宮腔内に入ることが難しくなります。
子宮頸部の円錐切除術では頸管腺が切り取られるため、頸管粘液分泌不全が増加すると考えられています。

●検査法

排卵日の2~3日前から排卵日に頸管粘液の分泌されている量と性状を検査します。通常は0.3ml以上あり、透明で細い棒で引き上げると10cm以上のびます。
また、ガラス板に広げて乾燥させるとシダ状の結晶があらわれます。排卵期に検査をしますので、頸管粘液の検査と同時に性交後試験(フーナーテスト)を実施して、精子との適合性をチェックします。
顕微鏡で頸管粘液中の運動精子を確認します。

●治療法

排卵前にFSHやHMG製剤を注射し、女性ホルモンの分泌を促すことで頸管粘液を増加させることができます。それでも頸管粘液が増えなければ人工授精の適応となります。
また、クロミフェンを何周期か服用すると半数近くの人に頸管粘液が減少する副作用がみられます。
この場合、クロミフェンを休薬するか、注射を併用することで頸管粘液分泌を改善させます。

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5. 免疫因子(抗精子抗体)

通常は女性の体の中には精子に対する抗体はつくられませんが、不妊症の女性の一部で、この抗体(抗精子抗体)が見つかる場合があります。
もし精子に対する抗体があると、抗体は精子と結合して精子の動きを止めてしまいます。
この抗体は頸管粘液や卵管液中に分泌されていますので、精子は卵子と受精するところまで到達できずに止まってしまいます。

●検査法

女性の血中にある抗精子抗体の有無について検査します。

●治療法

抗体があれば自然妊娠は困難です。
抗体量が少なければ、人工授精でも妊娠可能ですが、抗体の量が多ければ体外受精の適応となります。

6.子宮因子(子宮筋腫・子宮内膜ポリープ・子宮内腔癒着症・子宮奇形)

これらは子宮が原因で不妊となる代表的な疾患です。子宮筋腫・子宮内膜ポリープとは子宮にできる良性の腫瘍のことです。
これらができている場所や大きさにより、卵管を圧迫したり内膜に突出することで不妊の原因となります。
子宮内腔癒着症とは主に子宮内操作の治癒過程で生じる癒着のことで、流産手術や中絶手術がリスクとなります。

●検査法

内診や超音波検査で分かります。超音波でわからないような内膜ポリープは子宮鏡検査やソノヒステログラフィー検査(卵管通気通水検査のときに実施します)で見つかることがあります。

●治療法

筋腫が不妊や流産の原因になっていると考えられる場合は、筋腫核出術やポリープ切除術を行います。

不妊症の原因

不妊症の原因

7.子宮内膜症

子宮の内膜が、子宮の筋層や卵巣、子宮と直腸の間(ダグラス窩)、卵管采周辺など本来は内膜があるべきではないところに増殖した状態を子宮内膜症といいます。
子宮筋層にできたものは子宮腺筋症といいます。

子宮内腔以外の場所で増殖した内膜組織は、その場にとどまるため炎症や癒着をひきおこしたり、ひどい生理痛をもたらします。
子宮内膜症では、骨盤内での炎症や卵管周囲の癒着により、不妊となると言われています。

●検査法

内膜症性嚢胞(チョコレート嚢腫)は超音波検査でわかりますが、おなかの中の癒着は腹腔鏡検査でないとわかりません。
超音波検査で所見がなくても、ひどい生理痛がある場合は内膜症がある可能性があります。

●治療法

内膜症は放置すると骨盤内の環境が悪化して、さらに妊娠しにくくなる可能性があるので、早めに妊娠成立をめざしてステップアップしていきます。
腹腔鏡手術で内膜症の病変部位を切除して治療することもありますが、正常な卵巣機能が損なわれることもあるので、慎重に治療方針を検討する必要があります。

8.原因不明

受精障害や卵管の機能異常、卵の質不良、子宮内膜の機能異常が考えられます。

各種不妊スクリーニング検査で問題がなくても、受精障害や反復着床不全など体外受精を行うことではじめて不妊原因が明らかとなることがあります。
体外受精を行うまでは一般に原因不明不妊に分類されます。原因不明不妊の中には相当数、卵の質異常が含まれます。

卵子の異常の主な原因は加齢です。加齢により、卵子の老化が起こり、染色体不分離が生じやすくなります。
その結果、たとえ受精しても、染色体異常の受精卵が増加します。40歳以上では受精卵の約8割に染色体異常があります。

●検査法

卵子の質異常に関しては、受精卵の着床前診断がありますが、わが国では検査の対象としてよいのは、重篤な遺伝性疾患を出産する可能性のある遺伝子変異ならびに染色体異常を保因する場合、および均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる習慣流産に限られています。
着床障害が考えられる場合は子宮内環境の検査として子宮鏡検査や子宮内膜着床能検査(ERA)があります。

●治療法

体外受精で受精障害が見られた場合は、顕微授精の適応となります。顕微授精でも受精率が低い場合は卵子活性化法(カルシウムイオノフォア)を実施します。
着床能検査(ERA)で子宮内膜と受精卵の着床のタイミングにずれがあることが判明した場合はホルモン補充周期でずれを補正して受精卵を移植します。
着床能検査(ERA)についてはの下記のサイトをご参照下さい。
良好胚で反復着床不全がある場合は検査をお勧めしています。

■生殖医療サービスを専門とした遺伝子検査会社:アイジェノミクス・ジャパン